ノーマン夫婦へのインタビュー

2021年3月29日 22:39 JST

昨年、ホテル業界をはじめ、世界全体が大きな衝撃を受けました。このインタビューでは、2020年の初めには今の状況を全く想像すらしていなかったアナさんとラーズさんのノーマン夫婦にお話をお聞きしました。ノーマン夫婦は2017年の秋にコペンハーゲン郊外にあった家を売却し、田舎に引っ越してB&B「The Norrmans」をオープンしました。

ウェブサイトを見るだけでお二人がどれほど情熱をもってB&Bを運営されているかを感じとることができます。ホテル業界に最初に参入したのはいつ、またどのようにしてですか?

自分たちのB&Bをオープンする前に直接ホテル業界で働いた経験はありませんが、二人ともずっとサービス業で働いてきたので、常に関心のある業界ではありました。しかしながら、私たち自身が旅行して宿泊することによって得た経験以外の知識は全くありませんでした。

美しい田舎にあるB&Bに加えて、海沿いの別の物件を購入して事業を拡大されたとお聞きしています。どのような流れでそうなったのですか?また、ビジネスを成長させたいと考えている方々へのアドバイスはありますか?

はい。より小さな物件を運営して利益を出すことが可能かどうかを試してみたいと思い事業の拡大をしました。最初に計画し出した頃は、周りの人達からは死ぬほど働いても利益にならないだろう、数年で辞めることになるだろうと笑われました。

それでも、入念に計算してみた結果、利益が出ることが分かりました。利益が出る適切な料金を請求して、ゲストが必要とするものを提供できるようにすれば良いだけです。B&Bでありながら、様々な点で通常より良いサービスを提供するようにしてホテルレベルの料金設定にしました。それが上手くいきました!

海沿いの家を購入したのはパンデミックが始まる直前のことです。異なるタイプのゲストを引き付けるために異なるタイプの宿を提供したいと思ったのです。私はこの家が大好きです。海の近くの小さな漁村にある古い保存状態の良い鍛冶屋で、それを囲むように家が建っています。そのまま使用することにして、少し装飾しただけです。

パーティーのために借す家なので、人数に関係なく同じ料金で提供します。B&B「The Norrmans」は夏にはいつもほぼ満室になるので、大人数で宿泊したいゲストに紹介するにはとても良いオプションです。ゲストはレストランのテーブルを予約して、そこで食事をすることもできます。メインのB&Bの他に貸すことのできる小さな家を手に入れて良かったと思います。

クリエイティブに考え、クリエイティブに行動し、失敗を恐れないでください。失敗は何もしないことです。

この1年間のコロナウイルス・パンデミックによって直面したチャレンジについて、また、それらをどのように克服してきたについてお聞かせいただけますか?

人生で最も挑戦となる1年でした!私たちのB&Bはデンマークにありますが、これまでは99%がスウェーデンからの予約でした。初めのうちは国境がまだ開いていたので、キャンセルになったり、再び予約が入ったりで、満室のはずだった週末に半分ぐらい空きがある状況になりました。コロナウイルスが爆発的に広まったとき、夏の間中ずっと満室になるほどの予約が入っていました。週末は秋と春の分も予約が入っていました。

前払いで支払われていたため、全てを返金するとすれば経営していくお金すらなくなる危険がありました。当初は、2週間先の分まで見越して働いていれば大丈夫だと思っていました。しかし、国境が突然閉鎖されたため、予約全てが一瞬にして無くなってしまったのです!本当に難しい状況でした。そこまで沢山のお金を返金する必要がなければ何とか生き残れると思えたかもしれません。目の前が真っ暗になりました。新しいシェフのために農園に大きな温室を建設したため、緊急時のための予備基金がありませんでした。それに加えて、パンデミックの直前に海沿いの家を購入して、そこにもお金を投資してしまっていました。最悪の状況でした。最後の手段として、予約を入れていたゲストたちに連絡を取り、払い戻しの代わりに予約を延期してもらえないか尋ねました。多くのゲストは、私たちが破産すると確信していたためそうすることを躊躇しましたが、承諾してくださった方々には本当に助けられました。

秋には普通の状態に戻るだろうと思っていたので、それまで何とかしようと思っていました。それでも、春と夏が駄目になった痛手は大きなものでした。パンデミックの直前に農園の仕事のために数人雇ったばかりでしたが、解雇する必要があると思っていました。しかし、このまま残りたいと言われて驚きました。給料のことは心配せずに一緒に何とか状況を改善して乗り越えようと協力してくれたのです。そして、実際にそうすることが出来ました!1か月の間に、100%スウェーデンからのゲストであった予約を100%デンマークからのゲストに変えることができました。積極的に宣伝しました。ジャーナリスト達に電話して、誰も知らない場所に私たちのB&Bがあることを伝えました。そうして記事にしてもらえたのが良い宣伝になりました。

お二人のInstagram (@thenorrmans)から、ビジネスを救うために大きな個人的な犠牲を払う準備ができていたことについて読みました。このパンデミックは、最悪の事態に備えておくことの大切さを考える役に立ったと思いますか?

全くそのとおりです。リース契約を結んでいた車を抵当に入れましたが、皆が経済的に出費を抑えようとしている状況下ではその車を売ることさえできませんでした!銀行に相談して、ローンの返済を一時停止してもらいました。そうしなければやっていけませんでした。

銀行がローンの支払いを延ばしてくれたため家を手放さずに済みました。売りに出すとなればそれは銀行にとっても損失だったと思います。その期間、払うお金がなかったので、生き残るためにはそうするしかありませんでした。

私たちを取り巻く世界は大きく変化しました。このビジネスを本当に愛しているので、それを救うために出来る限りすべてを犠牲にしていただろうと思います。どうしようもない場合には、何とか続けていくためにまず新しく追加した物件の方を先に手放して、次に家を手放そうと計画を立てました。

今後、一番懸念されるのはどんなことですか?また、今後6〜12か月間でホテル業界とお二人のビジネスにどのような影響があると思いますか。

断言するのは難しいですが、ワクチンの接種が進んでいるので、ゆっくりと少しづつ正常な状態に戻っていくと思います。

春までに大きな変化はないと思っています。会議、結婚式、イベントを過去に行っていたように行うことはまだ難しいと思います。また、田舎にある宿泊施設の方が大都市にある宿泊施設よりもはるかに良い状況にあると思います。

私たちのB&Bは今年の夏の分はすでに満室です。この状況下でも人々の旅行したいという気持ちは強いようです。この業界にいる私たちは何も当たり前だと思うことなく、どんな状況にも合わせられるように備えておく必要があると思います。柔軟であり、将来のどんな困難にも適応出来ることがとても重要だと思っています。

現在、多くの宿泊施設のオーナーは、危機の中で生き残る方法や、さらにビジネスを拡大する方法を見つけようと適応しているようです。困難の中でビジネスチャンスを見つけることができましたか?

できました!現在、スタッフをもう一人増やしている最中です。平日をさらに有効に活用できるようにするためのスタッフです。加えて、私たちは近隣の会場と協力して行える新コラボレーションに取り組んでいます。まだ途中なのですが、ウェディングや会議、お祭などのために使用する予定です。

そうした需要は戻ってくるはずなので、事前に準備しておくことが大切だと思っています。最初は小さなイベントから始まり、徐々に大きなイベントへと拡大していくことでしょう。近い将来に直ぐ、それらが回復するとは思っていませんが、それでも可能な方法で人々は集まりあいたいと思うはずです。そのニーズを満たすためにどうすれば良いかについて考え始めています。

事業を拡大するために、2つの部屋を追加することの承認と資金提供を協議会から得たいと考えています。今ある少しのお金でクリエイティブさを発揮できるように一生懸命取り組んでいます。

同じように難しい状況下にいる他の皆さんに、今年の春と夏について何か伝えたいことがありますか?

遠い将来を見ないようにするべきでしょう。この危機にどのように適応できるかを見極めるために、新鮮な目でビジネスを見るようにして下さい。

電話を手に取って小さなホテルにかけて、「最近どうですか?」とか「どうやってその問題を解決したのですか?」、「こんなことはどう思いますか?」と尋ねることにより、助けや協力して行うプロジェクトなどを沢山得ることができました。 そうすることを恐れないでください。仲間が居ればより強くなれると本当に信じています。そして、それが将来のさらなるビジネスチャンスにつながるかもしれません。

流動的に全てが常に変化し続けている状態にあるため、ビジネスのための新しい方法を見つけ、新しい政府の規則に適応することは困難です。レストランが人々を旅行させる大きな理由であり、現在レストランが休業しているにも関わらず、私たちのB&Bは満室になっています。各客室にゲストが食事をするためのテーブルを準備しました。豪華なルームサービスを受けられるようにしたのです。1年前の私であれば、ゲストが自分の部屋で食事しなければいけないのに、通常と同じ料金で宿泊パッケージを販売することなど考えられなかったでしょう。そんなアイデアは笑って終わらせていたと思います。でも実際にそれが上手く行っているのです。私たちが適応しているように、ゲスト達もこの特別な状況下に適応していることを発見しました。枠にとらわれずに考えるようにして、自信を持って宣伝してください!私からのアドバイスは次の通りです。クリエイティブに考え、クリエイティブに行動し、失敗を恐れないでください。失敗は何もしないことです。